―せんせい。
「…んあッ…」
―ねえ、せんせい。
「ふ、あ…」
快感に溺れる。
でもそれは、決して甘い快感なんかじゃなくて。
ただの苦痛。
「ひゃッ…やぁ…」
男が頻りに腰を動かす中で、
俺の脳裏をよぎる、青い空。
あまりにも高すぎる。綺麗すぎると、
あのころは二人で、笑い合っていた。
俺たちは、似ていた。
悲しいくらい、似ていたんだ。
「あッ…んやぁ…ふ、は…」
男が俺の腰をなぞる。
深く入り込む快感は、あの頃、深く心に入り込んでいた痛みに似ている。
せん、せい…。
これじゃあ空が高すぎる。
これじゃあ太陽が眩しすぎる。
「んはッ…や、も…ひやぁあッ…」
何度目かの絶頂を迎えた時、うっすらと涙の幕が張った瞳の奥に、
美しすぎる、青空が見えた。
せんせい。
キュヒョン、せんせい。
俺を、置いていかないで。
*******
頭から勢いよくシャワーを浴びる。
温いお湯と一緒に零れる嗚咽は、自分じゃないみたいに遠くから聞こえた。
知らない男に、抱かれた。
バイシュンを、やってしまった。
どうだって良かったはずなのに、どうして今更、あの人を思い出すんだろう。
キュッとシャワーのコックを捻る。
ポタポタと体から落ちる水滴をぼんやりと眺めながら、
俺はただ、バスルームに立ち尽くしていた。
「………ヒョクチェ…?」
不意にバスルームの外から声がして、俺は慌ててまたコックを捻った。
凄まじいシャワー音と共に、勢いをつけて、お湯が体にかかる。
あまりの勢いで体中が痛いけど、今はそれどころじゃなかった。
ドンへ…
「ねえ、ヒョクチェ。怒ってるでしょ?」
ドンへ、
「ごめん、俺、最低だよね…」
…ドンへ、
「ヒョクチェのこと、助けたかったのに…」
―俺もだよ、ドンへ。
何かに突き動かされる。
手は勝手にシャワーを止めていて、
足は勝手にバスルームの外へと向かう。
俺は裸のまま、バスルームの引き戸を引いた。
目を曇らせる水蒸気があたりに広がって、その中で、ユラユラと揺れる、
まるで蜃気楼みたいなドンへがいた。
「…っドンへッ…!」
どうしてだろう。
俺は濡れているまま、裸のまま、ドンへに抱き着いた。
悲しそうな瞳が、せんせいに似ているからだろうか。
「…ヒョクチェ?」
心配そうな声色のドンへに、俺はただしがみつく。
ドンへは何かを感じ取ったように、俺のことを抱きしめかえしてくれた。
ずっとずっと、誰かに助けてほしかった。
誰かに、必要とされたかった。
せんせいは、それを叶えてくれなかったから。
だから、ドンへ。
ドンへのことを、俺が助けるから。
俺のこと、ドンへが助けてよ。
「ごめんね、ヒョクチェ…」
そういって俺の背中に張り付く水滴を拭き取るドンへに、
俺は返事もしないで、ただただ「ドンへ」と名前を呼び続ける。
置いていかれたくない。もう、一人にはなりたくない。
「俺とヒョクチェ、似てるのにね…」
そういって悲しそうに笑ったドンへは、ゆっくりと俺の髪を撫でた。
そういえば、せんせいもよく、俺の髪を撫でていた。
なんだかもう、そう思ってしまうと、心の中で何かが止まらなくなる。
―ねえ、せんせい。
「…ど、んへ…」
―キュヒョン、せんせい。
「お願い、だから…」
―せんせい、俺を…
「一緒に、逃げて…」
―置いて、逝かないで…。
空が美しすぎる。あまりにも澄んでいる。
これじゃあ、せんせいが逝ってしまう。
「…んあッ…」
―ねえ、せんせい。
「ふ、あ…」
快感に溺れる。
でもそれは、決して甘い快感なんかじゃなくて。
ただの苦痛。
「ひゃッ…やぁ…」
男が頻りに腰を動かす中で、
俺の脳裏をよぎる、青い空。
あまりにも高すぎる。綺麗すぎると、
あのころは二人で、笑い合っていた。
俺たちは、似ていた。
悲しいくらい、似ていたんだ。
「あッ…んやぁ…ふ、は…」
男が俺の腰をなぞる。
深く入り込む快感は、あの頃、深く心に入り込んでいた痛みに似ている。
せん、せい…。
これじゃあ空が高すぎる。
これじゃあ太陽が眩しすぎる。
「んはッ…や、も…ひやぁあッ…」
何度目かの絶頂を迎えた時、うっすらと涙の幕が張った瞳の奥に、
美しすぎる、青空が見えた。
せんせい。
キュヒョン、せんせい。
俺を、置いていかないで。
*******
頭から勢いよくシャワーを浴びる。
温いお湯と一緒に零れる嗚咽は、自分じゃないみたいに遠くから聞こえた。
知らない男に、抱かれた。
バイシュンを、やってしまった。
どうだって良かったはずなのに、どうして今更、あの人を思い出すんだろう。
キュッとシャワーのコックを捻る。
ポタポタと体から落ちる水滴をぼんやりと眺めながら、
俺はただ、バスルームに立ち尽くしていた。
「………ヒョクチェ…?」
不意にバスルームの外から声がして、俺は慌ててまたコックを捻った。
凄まじいシャワー音と共に、勢いをつけて、お湯が体にかかる。
あまりの勢いで体中が痛いけど、今はそれどころじゃなかった。
ドンへ…
「ねえ、ヒョクチェ。怒ってるでしょ?」
ドンへ、
「ごめん、俺、最低だよね…」
…ドンへ、
「ヒョクチェのこと、助けたかったのに…」
―俺もだよ、ドンへ。
何かに突き動かされる。
手は勝手にシャワーを止めていて、
足は勝手にバスルームの外へと向かう。
俺は裸のまま、バスルームの引き戸を引いた。
目を曇らせる水蒸気があたりに広がって、その中で、ユラユラと揺れる、
まるで蜃気楼みたいなドンへがいた。
「…っドンへッ…!」
どうしてだろう。
俺は濡れているまま、裸のまま、ドンへに抱き着いた。
悲しそうな瞳が、せんせいに似ているからだろうか。
「…ヒョクチェ?」
心配そうな声色のドンへに、俺はただしがみつく。
ドンへは何かを感じ取ったように、俺のことを抱きしめかえしてくれた。
ずっとずっと、誰かに助けてほしかった。
誰かに、必要とされたかった。
せんせいは、それを叶えてくれなかったから。
だから、ドンへ。
ドンへのことを、俺が助けるから。
俺のこと、ドンへが助けてよ。
「ごめんね、ヒョクチェ…」
そういって俺の背中に張り付く水滴を拭き取るドンへに、
俺は返事もしないで、ただただ「ドンへ」と名前を呼び続ける。
置いていかれたくない。もう、一人にはなりたくない。
「俺とヒョクチェ、似てるのにね…」
そういって悲しそうに笑ったドンへは、ゆっくりと俺の髪を撫でた。
そういえば、せんせいもよく、俺の髪を撫でていた。
なんだかもう、そう思ってしまうと、心の中で何かが止まらなくなる。
―ねえ、せんせい。
「…ど、んへ…」
―キュヒョン、せんせい。
「お願い、だから…」
―せんせい、俺を…
「一緒に、逃げて…」
―置いて、逝かないで…。
空が美しすぎる。あまりにも澄んでいる。
これじゃあ、せんせいが逝ってしまう。
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